オーバーフローの修理
ヤンマー管理 MRT650RZ のオーバーフロー対策
ヤンマーの MRT650RZ が購入直後から、エンジン起動後キャブレーターからガソリンが漏れ、エンジンが停止してしまうオーバーフローが発生しました。
購入元に修理依頼をしましたが、起動3~5回に1度発生、
新品のキャブに交換しても直りません。
やむなく自分で直すことにしました。その時の記録です。
【A】
私は多少機械に強い方なので、メーカーに頼らず、自分で直すことにしました。
購入してから3年後なので土埃でかなり汚れています。
手前がオイル式エアーフイルターで、この奥に問題のキャブレーターがあります。
まずこのエアーフイルターからを取り外します。
【B】
茶色のホースはエンジンのクランク室に繋がっていて、エンジンで温もった空気を、エアーフイルターからキャブレーターへ送り込んで、燃焼効率を上げています。
オーバーフローが起きると、ガソリンがエアーフイルター内に入り込み、このホースを伝ってエンジンのクランク室に流れ込みます。
このホースはエアーフイルターに差し込んであるだけなので、引っ張っぱると簡単に抜けます。
【C】
ガソリンタンクのガソリンが、重力でキャブレーターへ流れ込む、燃料ホースです。
ペンチでクリップを挟みホースを下方へ抜きます。
【D】
A.で見えている六角ナットを、モンキー又はスパナで外し、エアーフイルターを手前に引っ張ると、簡単に外せます。
汚れていたので綺麗にウエスで拭き取りました。
【E】
中央に見えているオーバル形状の白いアッセンブルが、問題のキャブレーターです。
2本のボルトに差し込まれているだけですが、細いテンションバネや棒状のリンクが引っ掛かっていますので、そのままでは外れません。
【F】
細いバネと丸棒のリンクは運転中に負荷変動があっても、エンジンの回転数を一定の範囲に保持するためのガバナー機構です。
繊細な部品につき無理せず、バネとリンクをペンチで外します。
【G】
キャブレーターを外すと、マニホールドのガスケットが見えます。
中央の丸くて黒い穴の奥はシリンダーです。
かなり土埃で汚れていますが、シリンダー内に土埃が入るとエンジンに悪いので、綺麗なウエスなどで穴を塞ぎます。
【H】
これで無事キャブレーターを外せました。
必要工具はラジオペンチと小型のモンキーだけで簡単でした。
工業用アルコールで綺麗に清掃します。
【I】
上部がキャブレーター本体、下部がフロートチャンバーです。
フロートチャンバーは、ガソリンを一定量に溜めておく容器で、内部にフロートとニードルバルブが入っています。
右下の押し棒は、チャンバー内のガソリンを抜くときに使います。
【J】
フロートチャンバーを分解したところ。
底の六角ボルトを外すと、黄色い樹脂製のフロートが見えます。
ガソリンタンクのガソリンが、左の管から重力でフロートチャンバー内に、流れ込みます。
(上部に大気圧用ピンホールがある)
【K】
ガソリンタンクから流れ込むガソリンの量に応じてフロートが、左の軸を支点に上・下します。
フロートの支点の少し右に付いているニードルバルブが、フロートに連動して上・下に動きます。
【L】
フロートの上にある小さな尖がったピンがニードルバルブです。
この黒い部分はニトリルゴムの焼き付けだと思います。
チャンバー内が一定量になると重力で流れ込んでいたガソリンがこのニードルバルブの先端で流入口を閉じます。
殆どの場合、この部分をキャブクリーナーで清掃すれば直ります。
古い耕耘機は、このゴムの部分がフロートで押されているため、穴の形状の段差を生じ、オーバーフローが発生することがあります。
この場合は、部品交換で改善します。
【M】
しかし、キャブクリーナーで清掃しても直らず、キャブを交換しても直りませんでした。
原因は、ガソリンを一定量で止めるニードルバルブの位置が、若干下の方だったので、少しの傾きで、ガソリンが流れ込んでいたのです。
設計上のマージン不足か、部品が設計図通りに出来ていなかったのか、ここの所は不明です。
【N】
実験の結果、ニードルバルブを0.8mm上げると直りました。
・シムの形状:外径5mm×内径2mm×厚み0.8mm
・材質:ポリアセタール(ジュラコン)
【O】
ニードルバルブの細い軸にシムを入れます。
【P】
シムを入れたニードルバルブを、フロートに止めます。
狭い所に小さな部品を取り付けますので、少々手先の器用さと根気が必要です。
分解した順の逆順で組み立てて改造完了です。
以上の改造後、オーバーフローは1度も起きなくなりました。
又、エンジンの始動も1発で快調 ♪♪♪